
私がジャカルタで医師や病院を選ぶに当たって、当地の日本人医療関係者にお目にかかり、貴重なアドバイスを頂きました。その中からいくつか紹介します。
この国では日本のように「A病院のX医師」ということは稀で、「X医師はA、B、C病院で勤務をしている」という風に、著名な医師は複数の病院で勤務していることが多いようです。そして、患者も「A病院の患者」ではなく、「X医師の患者」という風に医師と患者の個人契約的な要素が強く、その結果、X先生の患者は、A,B,C病院のいずれでも診察を受けることができることが多いようです。
(注;2006年現在では、1人の医師は3つの病院まで診察可能となっているようです)
2006年現在では、ジャカルタ駐在の日本人、欧米人が利用している産科医は、ほんの一握りのようです。短期間の駐在員で、医師の英語コミュニケーション能力を求めたり、その医師での出産経験がある人が身近にいる、という条件を求めると、結局選択肢は2,3人となってしまうようです。従って、ジャカルタで産科医を選ぶといっても、実はその一握りの産科医の診察を受けてみれば比較ができるので、全員の診察を受けてみて、自分に一番合った人を選ぶこともできます。
上述のように、各医師は複数の病院で勤務しているため、まず自分の担当医師を決定し、その医師の勤務している病院の中から健診を受ける病院、出産する病院を選べます。日本で病院を選ぶ時と同様、病院のスタッフ、設備や雰囲気等も大事ですが、当地ならではの要因としては交通渋滞があります。陣痛が始まってからの移動時に交通渋滞にはまったら・・・、というのがジャカルタの妊婦の最大の不安。特に自然分娩の場合、出産する病院はより自宅に近い所が無難かと思われます。
私はWomen and Children Clinicという病院で健診を受けました。ここの健診では、超音波健診は日本同様にありますが、日本では通常行われる子宮底、腹囲の測定はありません。出産の方法については、私はバースプランを提示し、自然分娩、夫の立会い、輸血必要時の対応等に関する希望を説明し、医師の了承をとりました。
病院は新しく清潔な雰囲気で、受付には日本語可能なスタッフがいるので、予約も日本語で出来ます。待合室には日本語の出産関連雑誌もあります。
出産に臨んだメディストラ病院は総合病院で、入院施設は個室と大部屋があります。陣痛・分娩室もスタンダードルームとVIPルームの2種類あり、入院時に選択します。私の選んだ陣痛・分娩室はVIPルームで、この部屋は日本のLDRのように、陣痛初期から出産直後まで対応できる部屋でした。出産後は、個室に入りましたが、室内にはソファーもあり、そこで家族も寝泊りできるとのこと。冷房・冷蔵庫完備で快適に過ごしました。
医師は英語を話しますが、助産師、看護師とも言葉はほぼ全てインドネシア語のみです。しかし、助産師は陣痛後半から常に最低1人は部屋にいてくれて、陣痛時には背部をさすってくれたり、出産後の体を拭く時も3人でとても丁寧に行ってくれるなど、とても親切で優しく応対してくれました。
入院から出産までずっと夫の立会いが可能です。言葉の問題もあり、夫の存在は日本での出産時以上にありがたいものでした。
「出産は古今東西行われているし、いくら途上国でも首都で産むわけだから大丈夫!」と根拠に乏しい楽観的思考で赴任後すぐに当地で出産した私ですが、その後1年ジャカルタに住み、周りからいろいろな医療面での事故や問題を聞くにつれ、無事に出産できたことがとてもラッキーなものだということに気付きました。
赴任当初に医療関係者の方から頂いたアドバイスで印象的だったのは、「この国は新生児医療、特に未熟児を治療する医療水準が低い。日本で出産したら助かった子供でも、ジャカルタで産んだがために命を落とすこともあり得る。その時にジャカルタで産んだことを後悔するようだったら、日本に帰りなさい。」というものでした。
日本で出産かジャカルタで出産か、今迷われている妊婦さんもいらっしゃると思います。私はジャカルタで出産したことで、産後、小さな新生児を囲んで夫や長女と一緒に喜びを分かち合えました。でも、迷われている方に対してどちらにすべきかをアドバイスすることは残念ながらできません。
ただひとつ思うのは、どこで出産するか迷っている方は、夫婦でよく話し合って、ふたりとも満足する結論を得ることが大切なのではないでしょうか。そうすれば、ジャカルタでの出産で困難が生じた場合でも、相手を責めたり、前述の医療関係者のお言葉のように「ジャカルタで産まなきゃよかった。日本で産んでいたら・・・」と後ろ向きになることなく、夫婦で助け合って困難を乗り越えられるような気がします。
関連リンク→ 日本での出産